3.9.11.根岸の不動坂
1.はじめに
不動坂の名称は、近くにある白滝不動尊に因むものです。この辺りで外国人遊歩道は、居留地から最も離れます。
坂は、山手の尾根と根岸湾の海岸線を結びます。坂上では西向きに進みますが、途中で180向きを変えて坂下では東向きに進みます。当初は狭い山道でしたが、1866年の慶応約書に基づき遊歩道は一段と整備されます。往時は、坂の上り下りの一歩ごとに変化する勝景が、外国人を大いに楽しませたようです。今に残る多くの写真で外国人の思いに近付けます。
2.昔日
外国人遊歩道に沿って13カ所の茶屋が作られます。右図は不動坂上の茶屋で、1880年代撮影と推定される日下部金兵衛の写真に、手彩色されたものでしょう。
茶屋は海側に建てられているので、目の前に広がる根岸湾(ミシシッピー・ベイ)が一望です。坂の下に根岸村の家々、背景に本牧の切立つ崖が見えます。
道に注目すれば、馬車が走れるように整地され、茶屋との対比から６ｍ(３間強)幅ほどと推定できます。往時の様子が良く分かります。
3.今日
現在、不動坂の景色に往時を思わせるものはありません。坂の下り始めに、荒井(松任谷)由実「海を見ていた午後」で歌われた山手の「ドルフィン」が半世紀以上に渡り営業しています。店内から見える景色も様変わりしています。
坂の途中から根岸湾も見えません。高速道路の高架や工場の煙突が見えるだけです。170年ほどの時の流れは、風景を激変させます。
4.引用
1.「Tea house at Negishi, near Yokohama(1880s?)」 Kusakabe,Kimbei Harvard Library
（2025年8月19日制作）