3.9.09.洲干島(しゅうかんじま)
1.はじめに
洲干島は秀閑島・宗閑嶋などとも表記され、あるいは茗荷島とも呼ばれる歴史的地名です。それが洲干島に転じるのは、入江が漸次干潟となる意味合いが込められているのでしょう。現代地図で洲干島を見つけることは困難ですが、最近、格好のランドマークである横浜市役所(中区本町6-50-10)が完成します。市役所周辺が洲干島であったと認識頂いて先に進みます。
2.洲干島とは
横浜市の地形変化、特に関内・横浜駅周辺は、歴史を遡らなければ理解できません。横浜市中心部は古大岡湾と古帷子湾の埋立で形成されます。埋立の嚆矢は1656(明暦2)年、古大岡湾に鍬入れされる吉田新田です。ゆえにそれ以前の地形、近世初頭の地形が横浜市本来の姿と云えます。
近世初頭の地形は、古帷子湾の北が三ツ沢台地、古大可湾の南が本牧台地、両湾を分けるように久保山台地が突き出ています。古大岡湾口は、本牧台地から対岸の野毛村に向かって延びる砂嘴で半ば塞がれます。その砂嘴と本牧台地の付け根部分が横濱村、その先端を洲干島と呼称します。島ではありませんが、久保山台地辺りから見れば島を思わせる地形だったかも知れません。図は近世初頭の地形に、近現代の埋立て(薄水色部分、水色は現在も海)を重ねたもので、変化の概要を示します。
開港以前の横濱村は、江戸の賑わいには程遠い寒村に過ぎません。横浜市歌(*1)の一節に「むかし思えば とま屋の煙 ちらりほらりと立てりしところ」と歌われる通り、十数戸の民家が散在するに過ぎません。
3.洲干島の現在
現代地図で洲干島は見つかりませんが、その位置を知る格好のランドマークが、前述のとおり横浜市役所です。建設に先立つ発掘調査の成果は洲干島遺跡と命名されます。
市役所北側に石積みの旧灯台寮護岸(中区北仲通6-117)が復元されています。灯台寮は洋式灯台を建設・整備する機関で、イギリス人技術者R.H.ブラントンなどが日本の灯台網整備に尽力しました。この辺りは灯台事業発祥の地といわれ、案内があります。
4.引用
1.「対話で学ぶ江戸東京・横浜の地形」 松田磐余著 之潮 2013年12月 彩色・加筆
2.「御開港横浜全図」 五雲亭貞秀 万延元年頃 部分・加筆
3.「横浜市史稿地理編」 横浜市役所 昭和60年12月25日
（2023年6月27日制作、7月13日更新）