3.8.07.1935年神奈川県名勝・史蹟投票概要
1.投票の概要
横浜貿易新報社(現神奈川県新聞社の前進)は、新社長就任と創業45周年を記念して1935(昭和10)年に八つの事業を行ないます。その一つが県下45ヶ所の名勝・史蹟を読者投票で選定すること (名勝史蹟45佳選)です。昭和初期は、1918(大正7)年制定の史蹟名勝天然紀念物保存法などによる保存運動の高まりや観光への注目が拡大した時代です。神奈川県内でも同様、このような状況下で投票が企画されます。
投票は、9月5日から10月5日までの31日間、「名勝・史蹟は神奈川県下のもの、投票は名称と所在地を記入すること。投票用紙は新聞紙面刷り込みを切り取るか、官製はがきに記入すること」との規定で実施されます。。
選定された名勝・史蹟には記念標建立、さらに10位までは扁額が進呈されます。名勝・旧跡は新聞紙面上での紹介や絵葉書・写真帳を制作して紹介宣伝することがうたわれています。
結果は「別紙:四十五名勝・史蹟投票結果」に示し、現横浜市域に所在するものを抽出して次に示します。建立された記念標は今に残るものがありますが、写真帳・絵葉書は制作されなかったようです。
2.投票結果(現横浜市域に所在するものを抽出)
| 順位 | 名勝 | 所在 | 現住所 |
|---|---|---|---|
| 2 | 妙香寺 | 横浜市北方町 | 横浜市中区妙香寺台 |
| 3 | 峰の灸 | 横浜市峰町円海山 | 横浜市磯子区峰町 護念寺 |
| 4 | 玉泉寺 | 横浜市中村町 | 横浜市南区中村町 |
| 8 | 浅間神社 | 横浜市浅間町 | 横浜市西区浅間町 |
| 16 | 鬼子母神常照寺 | 横浜市南太田町 | 横浜市南区南太田町 |
| 23 | 称名寺百観音 | 久良岐郡金沢町 | 横浜市金沢区金沢町 |
| 26 | 綱島温泉桃雲台 | 横浜市綱島町 | 横浜市港北区綱島町 |
| 29 | 若雷神社 | 都筑郡都岡村 | 横浜市港北区新吉田町 |
| 31 | 畠山重忠霊堂 | 都筑郡都岡村 | 横浜市旭区鶴ケ峰本町 薬王寺前 |
| 32 | 波切不動の滝 | 都筑郡新治村 | 横浜市緑区鴨居 林光寺 |
| 36 | 金蔵院安産子育観音 | 横浜市磯子 | 横浜市磯子区磯子 |
| 39 | 円満寺百衣観音 | 横浜市久保町 | 横浜市西区久保町 |
| 41 | 白滝不動尊 | 横浜市中区根岸町 | 横浜市中区滝之上 |
| 43 | 旧城寺 | 都筑郡新治村 | 横浜市緑区三保 |
| 44 | 日限地蔵尊 | 鎌倉郡永野村 | 横浜市港南区日限山 |
3.吟味
神奈川県内と言いながら鎌倉の古社寺が含まれません。当時、既に名勝・旧跡と認められていたので殆ど関心を抱かなかったのでしょう。おそらく新興の名勝・旧跡が選定されることを目指したようです。
その頃の横浜市域は現在に比べて狭く、久良岐郡・都筑郡・鎌倉郡に立地する名勝・旧跡が半数近くに及びます。すなわち横浜市は橘樹郡、言い換えれば旧東海道筋を中心に拡大していったと言えそうです。
4.記念標写真
参考のため、今に残る記念標の写真を示します。
2.引用
(2016年3月16日制作、2025年8月13日修正)