3.2.65.本牧山頂公園
1.はじめに
明治時代、丘陵に入り込んだ谷戸に牧場が開かれたとの記録も残ります。丘の詳しい様子は分かりませんが、本牧六カ村中央の里山として利用されていたようです。
明治40年測量の海図(*1)より引用した和田山(現本牧山頂公園)周辺の様子です。周辺は整然と区画された田畑のようです。丘の裾を外国人遊歩道が通過しています。
和田山は、第二次世界大戦敗戦後の米軍横浜海浜住宅地区として接収地に含まれす。返還されるのは1982年3月31日、横浜市は跡地の丘陵部を整備して1998年3月31日に公園として開園します。
2.本牧山頂公園
本牧山頂公園は、四季折々の自然と市街地を見渡せる景色が魅力です。ドッグラン・カフェが付帯され、各種イベントも開催されます。春は時期をずらして咲く緋寒桜・横浜緋桜・染井吉野に美しくあやどられます。
公園は、下末吉台地東南端の丘陵頂上部に広がります。和田山口から本牧荒井に及ぶウナギの寝床上の約1.4㎞は、場所場所で景色が大きく変化します。おおまかに云えば北から西にかけて横浜の街並み・丹沢山塊・富士山、東から南にかけて近くに三渓園や八聖殿・遠く東京湾から房総半島まで望めます。
なお和田山口が本牧側、本牧荒井の丘が根岸森林公園側になります。
2.1.ひざくらの丘(観山広場)
広場の奥に下村観山顕彰碑が建立されています。案内に『大正二年(一九一三年)原三渓の招きでここ和田山にアトリエを構えた。当時は、白帆の船が行き交う本牧の海を望む景勝の丘で、国の重要文化財に指定された「弱法師（よろぼうし）」などを描いている』と記されています。
「下村観山邸スケッチ(柳下晴屋画伯筆)」は、レストハウス付近の案内板よりの引用です。
横 観山広場の周囲は横浜緋桜が植栽され、その中に原木があります。
横浜緋桜は赤みが強く大輪の花を咲かせます。鮮やかな紅色の寒緋桜と病気に強い山桜の交配種だからでしょう。昭和47年ごろに誕生、昭和60年に名付けられて品種登録されています。
平成9年に原木(最初の木)が、生みの親である白井勲氏から中区制七十周年記念実行委員会に寄贈されて、この地に植栽されます。
2.2.本牧氏奥城
和田山口方面から進み、ゲストハウス手前で左側斜面を下ると中ほどの木立の中にあります。傍らの案内に次の説明があります。
『「本牧氏之奥城」
ここ和田山の一角は、本牧地区の氏神「本牧神社(本牧十二天)」の社家「本牧家」の先祖代々の墓所ですので、関係者以外の立ち入りを禁じます。
我が国古来の神道墓所は「奥城」「奥津城」と書かれ「おくつき」と呼ばれます。』
2.3.本牧神社
公園内ではありませんが、本牧神社は丘裾に鎮座しますので立ち寄るのも一興でしょう。
かつては本牧十二天の地に800年ほど鎮座、アメリカ軍の接収で本牧二丁目に仮遷座、接収解除で現在地に遷座します。本牧神社は稀な歴史を経ています。少し長文ですが、鳥居手前の「本牧神社本殿遷座に際し」を一読して時の流れを偲びたいものです。
本牧十二天社は海に面して海と共にあった神社です。江戸湾往来の廻船からは航海安全、地元民からは守護神と崇められます。毎年八月上旬に挙行される厄払いの「お馬流し神事」は、1566(永禄9)年から450年ほど続く地元民の誇る祭礼です。いまお馬様は少し離れた本牧漁港から沖に向かいます。
本牧十二天の地は埋立地の中に本牧十二天緑地として残ります。背後にぺリ－提督がマンダリン・ブラフと命名した崖があります。
2.4.その他の広場
和田山の丘にはアメリカ製らしき消火栓があります。まきばの丘の見晴山から本牧の町が手に取るように見え、周囲の桜は静謐な雰囲気を作り出します。どんぐりの丘にはキャンプ広場があります。
本牧荒井の丘との間をアメリカ坂が横切りますが、本牧山頂公園の一部です。尾根道を進むと、根岸湾が見え隠れします。
4.引用
*1 「日本本州南岸東京海湾根岸湾(明治40年)部分」 *2 「下村観山邸スケッチ」 ゲストハウス付近の案内板 *10 「原寸復刻江戸名所図会 上」 監修：石川英輔・田中優子 発行：株式会社評論社 1996年12月20日
（2025年10月23日制作）