3.1.03_1.3.02.帷子川支川水源域・上川井付近

1.はじめに

　相鉄線三ツ境駅の北側、保土ヶ谷バイパスと国道16号線が交差する上川井インターチェンジの南側に丘陵が広がり、旧武蔵国・相模国の国境にして東京湾・相模湾分水界が南北に通過します。分水界の東側が帷子川支川の水源域です。

　丘陵は旧米軍上瀬谷通信隊跡で、「2027横浜国際園芸博覧会」の会場に予定されています。旧通信隊の宿舎が残り、上瀬谷農業専用地区(A)が周囲を取り囲みます。
　参考のためにルート図(B)を添付します。

2.旧武相国境にして東京湾・相模湾分水界

　相鉄線三ツ境駅北口から北に延びる野境道路は、暫くの間ですが旧国境・分水界です。道路の左右共に下り傾斜で、分水界の尾根と分かります。道路に落ちた雨粒は帷子川水系に流れて東京湾に注ぐか、境川水系の相沢川あるいは和泉川に流れ込んで遂には相模湾に注ぎます。

　野境道路は中原街道と交差、聖マリアンナ医科大学を過ぎてなお北に延びます。しかし国境・分水界(3)は左折する道路に移ります。緩い坂を上り切ると左手は神奈川県立瀬谷高校です。右手は上川井市民の森で、国境・分水界は森の奥に分け入る野境みち(4)に移ります。森を抜けると農業地区が広がります。
　国境・分水界は旧通信施設跡を通過しますが、この付近から東側に逸れて行きます。

3.水源域

　農業地区は目標物に乏しいのですが、南北に貫く道路を進み右手に野球場が見えてくると、右手に小川(5)が現れ、途中で左手に移り、暫くして水たまり(6)になってその場は終わります。
　水源となる安定した流れか、間を置いて確認します。

　農道から野球場の反対(東)側、程ヶ谷カントリー倶楽部の西側外周に沿った道路に進みますです。ここは谷です。
　周辺を観察すると野球場辺りから道路の片側が湿り(7)、その後に幅1ｍほどの側溝(8)が続きます。
　地図は平行する二本の流れを示しますが、片側は雨水用の側溝です。地図の疑問は氷解しますが、地図はどのように制作されるかと新たな疑問が湧きます。

　側溝はフェンスの中に消えます。谷状の地形の周囲を上り下りして迂回しますが、途中で見える湿地(9)も様子から側溝に繋がるようです。再び側溝を確認すると迂回は終わりです。
　やがて農業専用地区正面の自動車道路に出ます。農業専用地区から遠ざかるように進むと、保土ヶ谷バイパス高架下を潜って国道16号線に出ます。
　側溝は、途中の三育小学校付近(10)で北からの流れと合流、工場・駐車場などの背後に入り込みます。16号線の少し横浜寄りで側溝は16号線の反対側に移りますが、この辺りでは既に川です。近寄れずに確認できませんが少し下流で本川と合流して東流(11)します。

4.2027横浜国際園芸博覧会について

　会場予定地は旧米軍上瀬谷通信隊跡、広さ約242ヘクタールでみなとみらい21地区の1・3倍に相当します。一帯は市街化調整区域、第一種中高層住居専用地域、準工業地域、準防火地域、第３種風致地区に指定され、都市計画以外では農業振興地域、農用地区域、農業専用地区です。国有の建物があるフェンスで囲まれた区域の外側は、農地のほか野球場・広場として市民が利用しています。

　会場には約100ヘクタールの利用が予定されます。また桜並木の美しい通称海軍道路は会場へのアピローチ道路として改修されるかも知れません。
　横浜市は花博後の跡地にテーマパーク開発を見込み、輸送手段を新交通システムと位置づけましたが民間資本が検討断念して振り出しに戻ったようです。

　会場付近は旧国境にして分水界、西側を鎌倉道上道が通過する歴史的に興味深いい一帯です。帷子川水系・境川水系の支川水源域であることも特筆できます。社会が縮小しようとする現在、現状のまま次世代に残すのも、現世代の責務のようにも思えます。

5.引用

1.「地理院地図」
2.「平成29年横浜市と米軍基地」横浜市政策局基地対策課平成29年6月
3.「2027国際園芸博覧会推進委員会」

(2022年10月20日制作)