2.5.地域の特徴：軽井沢と浅間下
2.5.1.軽井沢古墳
1.周辺の様子
明治の頃まで、南側の山裾までが海です。周辺には北軽井沢遺跡(消滅)、三ツ沢貝塚(神奈川県立翠嵐高校東南隅に案内板)、浅間神社の横穴墓(詳細不明)があります。しかし横浜市中心部に位置するために早くから開発が進み、他区に比べて遺跡の発掘調査例や確認数は少ないそうです。
2.軽井沢古墳
削平されていて古墳の姿は見られませんが、前方部が短い帆立貝型の墳形をした前方後円墳で、埴輪の出土はありません。そのことから前方後円墳の最後の姿を示していると思われています。
案内板の内容を次に示します。
『横浜市地域史跡 軽井沢古墳跡
登録年月日：平成12年11月1日
所有者 ：（注 自動車学校名が抹消されている）
区域 ：横浜市西区南軽井沢62番の1の一部
軽井沢古墳は、帷子川北側の台地上に所存しています。昭和40年(1965)に発掘調査が行われ、全長26.5m、前方部は幅16m・高さ2.3m、後円部は径19.5m・高さ2.9mをはかる前方後円墳で、3段の墳丘を持つことが明らかになりました。
墳丘からは、2ヶ所の埋葬施設が発見されており、後円部の中央に軟砂岩の切石積みの横穴式石室と前方部の主軸に直交するかたちで硬砂岩切石を用いた竪穴式石室がありました。前者からは、耳環・水晶切子玉、後者からは、鉄刀・刀子・ガラス小玉・須恵器提瓶(注：右図)などが発見されました。
出土遺物から、この古墳は7世紀前半に造られたものであると考えられ、横浜市域では最末期の前方後円墳です。さらに、それまで不明であった南関東の7世紀の前方後円墳の実態を知る上で貴重な資料を提供しました。
平成13年3月 横浜市教育委員会』
4.1.25.浅間神社
4.1.25.横浜道分岐と新田間橋
1.横浜道分岐にある案内板
『安政5年(1858)6月の日米修好通商条約調印によって開国に踏み切った幕府は、神奈川(横浜)の開港を翌年6月と定めた。
しかし、ミナト横浜の街づくりは開港３か月前の3月になって、やっと工事が始まった。当時は、東海道筋から、横浜への交通はまことに不便を極めたことから、幕府は、東海道筋の芝生村(現浅間町のこの地点)から横浜(関内)に至る「よこはま道」と呼ばれる道路を開いた。
これは、芝生から湿地帯であった岡野・平沼の各新田を経て戸部村まで１直線に通じる道路を築くと共に新田間(あらたま)、平沼・石崎の三つの橋を架け、併せて戸部坂・野毛の切り通しを開き、野毛橋(現都橋)、太田橋(吉田橋)を架けたものである。
記録によると、当時の橋の幅は3間(約6m弱)で道路もおそらくこれと同程度の幅員であったものと考えられる。
なにしろ、工期３か月の突貫工事あったことと、橋材が杉と松を使用した仮普請であったことから「３年ももつまい・・・」と噂されたが、それでも戸部村までの経費で、4470両かかった。
新開地横浜への主要路として大いに賑わい栄えたこの道筋も、時代の移り変わりと共に大きく変わり、わずかに住時の面影をとどめるのみとなった。
西区観光協会 軽井沢自治会 浅間町１丁目町内会』
2.横浜道についての補足
開港場を横浜に決意した幕府は新しい町づくりに取りかかります。なかでも最も緊急とされたのが、旧東海道と横浜を結ぶ新道建設です。道筋は芝生村浅間下(現浅間下交差点付近)から戸部村・野毛坂経由で吉田橋へ至ります。
芝生から戸部村手前までは海際に堤を築きます。新田間橋は現在と同じ位置、平沼橋は現元平沼橋より約30メートル下流側、石崎橋は現敷島橋付近です。その先の野毛橋までは野道を切り広げます。野毛の切通しを過ぎて野毛橋(現都橋)、太田橋(現吉田橋)になります。吉田橋には関門が設けられ、関内の語源になります。
橋幅は5.4m(3間)、堤の断面は台形で、平均して上幅5.4m(3間)、下幅7.2(4間)～8.1(4.5間)、高2.4m(8尺)です。現在の道路より圧倒的に狭小ですが、人馬が行き交うにはこれで十分だったと思われます。なお東海道のような大街道は６間幅、橋の横幅は川崎宿から保土ヶ谷宿までがほぼ３間（約5.4ｍ）、それより以西では2間から2間半と狭くなります。
大街道に準ずる小街道は３間幅、その他の道はさらに狭まります。自動車が行き交う現在の道路に比べて狭小であることが街歩きの勘所と思われます。
一部推定を含んで現在の道路で距離を実測すると、横浜道は3.4Kmほど、横浜道造成前の旧東海道横浜道分岐から保土ヶ谷宿・蒔田経由で吉田橋関門までは8.3Kmほどであるから、よほど便利になることは明らかです。
3.新田間橋
五雲亭貞秀「横浜平沼橋ヨリ・・・」は、旧東海道を分岐して南に延びる横浜道を描いていますが、一番手前に描かれている橋が新田間橋です。
五雲亭貞秀「新田間橋より・・・」は、西北から鳥瞰した図ですが横浜道の様子が良く分かります。図中の地名は拡大していますが、「新田門橋」は新田間橋の誤まりでしょう。「芝生新田」は引化新田、「ナベヤ新田」は岡野新田のことです。
現戸部6丁目付近に横浜道の一部が残りますが目測で幅5mほど。橋幅の規格がは3間(5.4m)なので道幅も3間でしょう。人家の間の路地でしたが、駐車場に転じたりしてこの先どう変化していくのでしょう。
途中、野毛山一帯には神奈川奉行所および関連施設もできて開港を待ちます。
25.新田間橋
長い題名を持つ五雲亭貞秀の図ですが、テーマは横浜開港間近にして完成した横浜道です。旧東海道から分岐した辺りから眺めた図で、一番手前に掛かる橋が新田間橋です。
陸路・海路で旧東海道と横浜村は結ばれていたものの、海外交易を目前にした時代の要請に応えられる規模・便利さはありませんでした。そこで開港を間近にした1859年、突貫工事で横浜道が造成されます。
神奈川宿西の芝生で旧東海道を折れ(現浅間下交差点付近)、埋立地の海辺を野毛山に向かい、野毛の切通を過ぎて左に折れ(現野毛交差点)て開港場に向かいます。途中5カ所に架橋されますが、旧東海道側から新田間橋、平沼橋(現元平沼橋)、石崎橋(現敷島橋)、切通しを過ぎて野毛橋(現都橋)、太田橋(現吉田橋)です。
現戸部6丁目付近に横浜道の一部が残りますが目測で幅5mほど。橋幅の規格がは3間(5.4m)なので道幅も3間でしょう。人馬が通行するにはそれで十分だったのでしょう。野毛山一帯には神奈川奉行所および関連施設もできて開港を待ちます。
3.参考文献
*1 神奈川県埋蔵文化センター「群集する古墳」 平成29年11月22日
*2 横浜市埋蔵文化センター「埋文よこはま 第10号」 平成16年11月15日
*1 五雲亭貞秀「横浜平沼橋ヨリ東海道神奈川台并カルイ沢茶店又遠ク大師河原ノ裏ヲ見ル」 1860 国立国会図書館所蔵
*2 五雲亭貞秀「新田間橋ヨリナベヤ新田塩焼屋并神奈川の台かるい沢・・・」 1860 国立国会図書館所蔵
*3 横浜市教育委員会文化財課「横浜の古道」 1987.3
*4 横浜西区史編集委員会「横浜西区史」 横浜西区史刊行委員会 平成7年3月31日
*1 五雲亭貞秀「横浜平沼橋ヨリ東海道神奈川台并カルイ沢茶店又遠ク大師河原ノ裏ヲ見ル」 1860 横浜市立図書館蔵(申請準備中)
*2 横浜市教育委員会文化財課「横浜の古道」 1987.3
(2020年4月22日制作)