1.2.11_1.3.2.東京湾・相模湾の分水界

1.2.11_1.3.2.東京湾・相模湾の分水界

1.水系と分水界

　水系は河川に関する用語で、国交省ホームページは『河川は、上流部から小さな河川が合流し、この合流を繰り返しながら徐々に海へ向かうにしたがい、大きな河川となっていきます。これら一群の河川を合わせた単位を「水系」と呼んでいます』と説明しています。水系には途中にある湖・沼・池、途中で分岐する河川を含みます。

　分水界は雨水が異なる方向に流れる境界のことで、水系と水系の境界です。分水界は至る所に存在しますが、山岳地帯で山稜が境界になる場合を分水嶺と云います。隣り合う川、あるいは背中合わせの川の間には必ず分水界が存在します。

2.大分水界

　太平洋側と日本海側を行き来すれば、どこかで分水界を超えます。トンネルで通過することもありますから気付く気付かないかは別です。この分水界を特に大分水界とか中央分水界と云います。

2.1.最も低い大分水界

　大分水界が日本アルプスの高い稜線を通過していることは想像できます。想像できないのは、大分水界の最も低い所は標高わずかに95mほどの兵庫県丹波市氷上町(旧氷上郡氷上町)と云うことです。瀬戸内海に向けて加古川、日本海に向けて由良川が旅を始めます。氷上町石生には水分れ公園、水分かれ資料館があって、町は分水界を売りにしています(写真は2000年撮影)。

2.2.横浜の分水界

　市内を流れる唯一の一級河川鶴見川と南側を流れる帷子川との間に分水界があります。いずれも東京湾に注ぎます。
　市中あるいは市境を通過する旧武相国境は東京湾と相模湾の分水界です。国境の東側に端を発する侍従川・大岡川は東京湾に注ぎ、西側に端を発する滑川・いたち川(柏尾川・境川)は相模湾に注ぎます。
　国境は箱根駅伝の難所で知られる権太坂切通(写真は国道１号権太坂)を通過しますが、標高は55mほどです。ここは柏尾川と帷子川の分水界です。

2.3.東京湾と相模湾の分水界

　横浜市の河川マップ(*1)に武相分水界を重ねたのが右図です。市内河川ながら、東京湾に注ぐ河川と相模湾に注ぐ河川が一目瞭然です。武相分水界は概ね旧武相国境に重なります。概ねと言うのは、この図内と図の少し南側に例外があるからです。

2.3.1.例外１：旧相模国鎌倉郡峠村

　旧武相国境は、現金沢区野島の西側室の木から始まり暫く西に向かいますが、北に向きを変えた辺りに国指定史跡朝比奈切通があります。国境が尾根道を繋ぐものなら朝比奈切通を横切る筈です。しかしこの辺りで東側に膨らみ、平地に近い鼻欠け地蔵(*3)まで下ってから再び尾根道に戻ります。旧相模国鎌倉郡峠村の東側外周(*4)になります。
　鼻欠け地蔵は江戸名所図会にも取り上げられています。地蔵の脇に描かれた小路が武相国境で、今も踏み分け道が続きます。
　国境が膨らんでいる理由は定かになりません。「吾妻鏡」に疫病を鎮める四角四境の鬼気祭の記述があります。四境は鎌倉の四方の境のことで東は六浦ですが、ついでに南は小壺、西は稲村、北は山内です。

2.3.2.例外２：三浦半島の分水界

　現金沢区野島の西側室の木から旧武相国境を歩き始めると、北(右手)が横浜市、南(左手)が横須賀市になります。旧国境、現市境の數100ｍ南側を鷹取川が流れますが、旧相模国であるにも拘らず東京湾に注ぎます。
　武相分水界の途中から、東京湾と相模湾を分ける三浦半島の分水界が延びています。人智と自然の狭間、なぜそう決まったかはなかなか分かりませんが、それを調べるのも興味深いものがあります。

3.参考・出典

1.「日本の分水嶺」　著者：堀公俊　2000年9月10日　山と渓谷社
2.「水分れ資料館」
3.「横浜の河川紹介(マップ)」
4.「白地図(Craft MAP)」
5.「原寸復刻江戸名所図会 上」 監修：石川英輔・田中優子　1996年12月20日　株式会社評論社
6.「朝比奈の歴史」　編著：朝比奈の歴史編集委員会　2004年9月1日　横浜市金沢区朝比奈町内会

(2020年1月15日制作、2020年3月8日更新)